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#Winter Program

冬編の成果展示#5

森口 武

「運ぶ者の足跡と足音」

 

馬のカンジキ        昭和40年ごろまで         木 金属 縄

 

 

What we learned from Aburaya-san

 

この馬のカンジキは、油谷さんが湯沢付近で入手したものである。かつての運送業者は、馬にソリで荷物を引かせて冬の街路を往来していた。街中の道路は人々の足によってある程度踏み固められているが、重い荷物をソリで引く馬の蹄は人の足よりも深く沈み込む。そのため、ソリを引く馬たちはこのようなカンジキを履かされていた。

このカンジキは、昭和 40 年ごろまで使用されていたらしい。自動車、そして除雪車の普及によって、冬の道路における支配的な輸送手段はトラック等に取って代わられた。荷物はトラックに積み込まれ、馬とソリは徐々に姿を消した。

 

 

Concept development

 

馬のカンジキは、何よりも馬の足に履かせるモノである。それは雪上についた馬の足跡を想起させると同時に、それ自体が馬の存在の痕跡でもある。モノは今、馬の存在の痕跡として、私たちに現前する。痕跡=足跡としてのカンジキからは、昭和 40 年ごろを境に姿を消した馬の身体が想起される。

この展示では、今や失われた馬の身体をテグスで表現すると同時に、平行線を描くその陰影によって、かつて馬が引いていたソリの軌跡を表現している。

 

 

Our story

 

運送業者の扱う馬はドメスティケートされた存在であり、傍にはつねに人が歩いていた。痕跡としてのカンジキは、油谷さんの語りをはじめとするさまざまな言説と組み合わさることで、馬だけでなく、馬の傍らを歩いた人間の足跡も同時に想起させることになる。

このカンジキを履いた馬は、傍らを歩く人の足音を聞き、そして、除雪車やトラックの音を聞いていたのかもしれない。馬が見たかもしれない足跡を陰影として示すと同時に、馬が聞いたかもしれない足音の再現を試みることで、これらのストーリーを提示しようとしている。

 

 

 

 

 

 

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