「AKIBI複合芸術ピクニック 」では、夏編のオンラインレクチャー・シリーズを通して受講生がそれぞれに独自のピクニックを構想し、秋田で実施したガイドブックを編集・制作しました。
11名の受講生による「ピクニック・ガイドブック」を、彼らのステイトメントとともにご紹介します。
伊東陽菜 Hina Itou
北海道出身。秋田公立美術大学美術学部3年景観デザイン専攻。マクロとミクロの視点両立を目指しており、現在は建築というアプローチからその可能性を探る。
行き止まりピクニック
冊子(50ページ、紐綴じ)
袋小路マップ、食べ物、マグカップ、ラジオ、毛布、以上をギターケースに収納
●ギターケースの中に冊子とピクニックセット一式を詰めた。ケース内側の地図には、ピクニックの目的地となる袋小路の所在地をマッピング ●ケースのヘッド部に収納した冊子には、街で探し当てた約50カ所の袋小路の写真を掲載
住宅街という都市計画によって役目が決められた区域でそれ以外の行為、例えばピクニックといった行為は可能なのか。本来意図していないであろう行為をすることによって計画性を問いたい。
袋小路もまた、都市計画のほころびや周辺住民たち自身の手で偶発的に誕生するものである。なので意味的にも、ここは計画から外れた行為をするのに適している。土地的に見ても袋小路は基本的に周囲を家が囲んでいるので、ピクニックがしやすい環境である。
しかし一方で袋小路は誰もが通れる道でありながら、日常的に使うのが周辺住民のみになる傾向があるため、それ以外の者は部外者として扱われる。それをときほぐすのにこのピクニックシートを用いる。楽器ケースは持ち運びに適しているのに加え、その形状自体が目的を発している。これを持ち歩くことによって、周りの認識が目的の分からない他者から目的を持った他者へと変わる(中に楽器は入っていないので正確には住民から認識される目的とは異なるのだが、ここでは袋小路の収集という目的を持つ)。そしてギターケースを開けるとそこにはピクニックセットが入っている。これは周囲の認識を他者から仲間へと転換させる可能性を持つ。食べ物を人に振る舞ったり、一緒にギターケースの上に座ってみたりすれば自然と袋小路という空間の認証を得ることができる。そうして普段では知り得なかった者同士がつながる現象はおそらく、区分けすることでは達成できなかったものではないだろうか。
稲村行真 Yukimasa Inamura
フォトグラファー、ライター。1994年生まれ。民俗芸能の取材、発信、研究を行っている。また、地域的な境界や繋がり、多文化共生に関心がある。石川県加賀市の獅子舞を取材して発信する「KAGA SHISHIMAI project」、身体的に土地を繋ぎ記録する「東京~石川500km徒歩」などのプロジェクトを実施。2020年度の「旅する地域考alternative」を受講。
獅子舞生息可能性都市
段ボール製の獅子頭、
小冊子7冊、獅子舞の映像記録5本
ガイドブック第1章PDF inamura_guidebook
獅子舞生息可能性都市<秋田>① 神社で獅子舞を奉納する – YouTube
●「獅子舞のフィルターを通して地域を見る」という視点から、今回は秋田駅周辺でのリサーチを反映して7章におよぶ小冊子を編集
●地元の段ボールや新聞紙などで、獅子頭と胴体を自作。それらを身に纏い、独自に考案した舞を街で実践した。このゲリラ・パフォーマンスの様子も5本の映像として記録
獅子舞の視点を通して土地の性質を見抜きます。
今回の対象地は秋田駅周辺の商業地。人口減少や民俗芸能の担い手不足の問題がある一方で、秋田駅周辺ではインフラコストを削減し、住空間や商業空間はより高く大きく集中的に設計されつつあります。その中でプライベート志向が強まり、空間的な余白や地域交流の機会が失われつつあるのでは? と感じています。
実際に新聞紙や段ボールなどを使い獅子頭や胴体を制作し、毛糸で縫い合わせ、地域を身に纏うようにそれを被り町を舞い歩き、空間や人の気質の視点から獅子舞の生息可否を検証しました。「上手だね」と声をかけてもらったり、写真を撮ってくれたりと見知らぬ人々と交流でき、地域の方々は予想以上に獅子舞に対して寛容だと感じました。空間的には舞うことができない場所も多々見られましたが、総じて秋田駅周辺の商業地における獅子舞の生息可能性は高いと言えるでしょう。
7章分のガイドブック、獅子頭や胴体の実物、獅子舞が実際に街で舞う映像などの制作を行いました。秋田駅周辺の土地の性質を見抜く手がかりになるとともに、暮らしやすさの実現などに必要不可欠な新しい文化を創出する萌芽として機能してくれたらと感じています。
加賀田直子 Naoko Kagata
1997年鳥取県生まれ。東京藝術大学音楽環境創造科卒業。北海道大学大学院文化人類学研究室修士課程在学中。北方民族をはじめ北方で生きる人々、また北方の静寂に関心を抱き、現在は北海道斜里町の猟師たちのもとで狩猟する身体や環境の知覚をテーマに研究に取り組む。2021年夏には同町で「葦の芸術原野祭」の企画・運営を行う。
森でピクニックするためのガイド
冊子(A5・40ページ)
光沢紙、トレーシングペーパー、秋田で採取した枝、葉、柿の実、ドーナツ、新聞紙
ガイドブックPDF(一部) kagata_guidebook
●自身の身体と集めた草木などを素材に、ホワイトキューブで撮り下ろした写真で感覚的にピクニックを表現。最終発表でも自ら「森でピクニック」を披露してみせた
●冊子の前半は森のイメージ写真、フィクションストーリー「明日ピクニックに行こうか」を掲載
北海道の開拓は巨大な木々を切り倒して森を開墾し、道や畑を作り出すことから始まった。近代的な侵略とも受け止められるこの行為は、巨視的に見ると森からひらけた安全な場所を確保するという意味において「ピクニック」できる場所をつくりだしたといえるかもしれない。巨大な木を一本切り倒すことを想像してみると人間やその他のいきものを含む様々な身体がそこにあったのではないかと想像できる。手や足や背中や、まなざしや、音や、においから、森との関係性を生み出す。小さな身体と大きな開拓について。
知床半島にすんで50年近く経つ女性は森が不気味で怖いと言い、知床で50年以上狩猟を行う男性は熊との遭遇は交通事故みたいなもので怖くないと言う。
わたしたちが森へピクニックに出かける時、それは開拓という領土化の延長なのだろうか。
森へピクニックに出かけましょう。
坂本森海 Kai Sakamoto
陶芸家、アーティスト。1997年生まれ、長崎県出身、滋賀県在住。2019年京都造形芸術大学卒業後、同年からシェアアトリエ「山中suplex」に在籍。さまざまな地域で自ら土や石を採取して素材とし、土で作った窯を用いて器を作ることから始める。土に触れ、焼成する行為に「陶芸」として枠組みされる以前の何か根源的な意味を感じ、さまざまなアプローチから自身の関心に対して取り組んでいる。
器に見る景色
陶器 5点、冊子3冊、スーツケース、インスタントカメラ、移植ゴテ
陶器の原材料:秋田の陶…カラミ、黄銅鉱、阿仁合残土、阿仁小渕土
沖縄の陶…国頭村土、マンガンノジュール、漂着軽石、珊瑚、貝殻、沖映通り工事現場土、琉球石灰岩、ガラス片、鉄屑
ガイドブックPDF(一部) sakamoto_guidebook
●秋田市の器店で購入した沖縄のやちむんをフォーマットに、秋田と沖縄で採取した土で4枚の器を制作
●北秋田市阿仁の土で作った秋田の陶は、素材に毒素を含むため、食器としては使用できない。沖縄の陶は、那覇市沖映通りの土で制作。 ●土の採取から完成に至るまでのエピソードを冊子に掲載した
日本の陶芸には、器に“景色”を見出そうとする鑑賞方法があります。
器の素地になっている土の焼け具合、釉薬と呼ばれるガラスのコーティングの流れ具合や、使用していく中で入るヒビや汚れなどの、コントロールできない偶然性、作為を超えた現象を、“自然の景色”に見立てることで美を見出していくことが、従来の“景色”の見方でしたが、器を作るための原料や技法などの過程にある出来事を知っていくと、またひとつ新たな“景色”が器の中に立ち現れてきます。
今回ピクニックを企画する上で、秋田の器屋さんで購入した沖縄の焼き物を起点に、秋田、沖縄でそれぞれ原料を採取し、購入した沖縄の小皿に使われている技法や模様をモデルにして、4枚の器を作りました。
原料を採取する旅で強く意識することになった、“移動”を取り巻く様々なエピソードと、インスタントカメラで撮影した旅の写真から、現象の美しさから見立てる景色ではない、美の発生以前の、なにか社会そのもののような景色が器の中に見出されていくようなことを、ピクニックとして体験できればと思い、企画しました。
加藤 曉 Akira Katou
2000年生まれ、兵庫県尼崎市出身。滋賀大学経済学部在学中。大学進学を機に滋賀県へ移住、湖国の自然をフィールドにポスト資本主義の社会と個人のあり方について探究と実践を行う。一環として、長浜市農村部での環境・経済・社会のサステイナビリティを主題としたフィールドワーク、東近江市での自然農法による稲作などを行う。
田んぼでピクニック
冊子(A5・12ページ)
ガイドブックPDF kato_guidebook
●現代の滋賀と60年代の秋田の稲作風景、構図の類似する2枚の写真を読み解くことを端緒に、田んぼでピクニックを提案
●自然と人間の接点の場、生産の場、コミュニティが生まれる場として田んぼを捉えて考察した
普段、私は手植え手刈り・自然農法で稲作を行うコミュニティに参加している。その活動中の昼休憩ではそれぞれがお弁当やお菓子を持参し、自らが手を入れている田んぼの横でわいわいみんなでお昼ご飯を楽しむ。この姿をピクニックの出発点とし、田んぼのそばでピクニックをする営みを1960年代の似た光景の写真と見比べながら掘り下げるガイドを作成した。
自然との接点・生産の場・コミュニティが生まれる場である田んぼ。それは人間の生の上で根源的に必要なものであるにもかかわらず、現代に自ら耕している人・その肌感覚を持っている人は少ないと思う。
1965年と現在、2つの写真を見比べながら自ら手を入れた田んぼのそばでピクニックすることの意味を考えていく。
菊地竜生 Tatsuo Kikuchi
沖縄県うるま市在住。宮城県にて仙台市市民活動サポートセンターセンター長、「Reborn-Art Festival2017」スタッフなどを務め、2017年にうるま市島嶼地域に移住。プロモーションうるまに所属し、「うるまシマダカラ芸術祭」など島の生活文化と外部人材の交わりを生み出す企画を運営。妻の故郷である秋田県五城目町との二拠点生活を検討中。
スーカーワタイ
パンフレット(A5・24ページ、蛇腹織)
ガイドブックPDF kikuchi_guidebook_omote
kikuchi_guidebook_ura
●沖縄本島と離島を結ぶ「海中道路」、その干潟をあえて歩くためのガイド。蛇腹折りの長さは約4m
●海中道路の歴史、ピクニックの楽しみ方、干潟ルートのポイント解説などを掲載した面、現場の干潟写真で構成した両面構成
沖縄県うるま市の平安座島には、潮の満ち引きによって生まれた干潟を渡るスーカーワタイ(干潟歩き)が行われていましたが、約50年前に干潟が埋め立てられ海中道路ができたことによってその風景は姿を消しました。
このピクニックではその風景を蘇らせると共に、スーカーワタイの合間に無目的に過ごす時間を織り交ぜ、「自然と開発」「観光と暮らし」など複雑なバランスが絡み合う沖縄での日常を考えます。
・このガイドブックはスーカーワタイする前に最低限必要な情報を記載しています。ガイドブックを参考にスーカーワタイが行われていた過去を追体験できます。
・スーカーワタイをした後は「海の文化資料館」に行ったり、過去にスーカーワタイを経験した方や、今も干潟で漁をしている島人の話を聞いたりするのがオススメです。スーカーワタイへの理解がより深まるだけでなく、干潟環境で育まれた島の営みを追体験することができるかもしれません。
鈴木みどり Midori Suzuki
元教員。2019年5月より秋田市民となる。自身の悪性リンパ腫の治療とコロナのために活動は制限されたが、ウェブ上での活動のチャンスと捉え、“私ができることは何か”を常に考えている。退職後は、海外で日本文化の交流や書道のワークショップなども実施している。
感じて動く日
冊子(121×166㎜・45ページ、和綴じ)
表紙に葉っぱのちぎり絵、冊子には書の挟み込み5点含む
ガイドブックPDF suzuki_guidebook
●日々の出来事を発信している自身のブログから7つの記事を選び、再構成。「金」「時」「人」というキーワードを抽出した
●書道の教員だった経歴を活かして書を活用
●拾い集めた落ち葉によるちぎり絵を表紙に
「ピクニック」というテーマに対して、私は「人」「時」「金」というキーワードを設定しました。これらは全て、限りがあり、無限ではありません。だからこそ、その中で楽しむ方法、術(すべ)を見つけるべきだと思うのです。楽しくなければ生きている意味はない。好奇心、探究心が生きる源だと考えるからです。
そして、ピクニックは私の日常です。少しでも“一歩を踏み出すキッカケ”となる人生のガイドとしていただけたら幸いです。
海外への渡航が可能になったら、私はオーストラリアに行きます。フィリピンのバギオで最初の英語学校のスタッフだった梨恵に逢いたいからです。
もし、私が「みなさんと逢いたい」と思って連絡をとった時、嫌だったら「忙しいから」と断っても大丈夫です。今回のピクニックに参加して、逢いたい人が増えました。
須山聡也 Toshiya Suyama
1998年生まれ、沖縄県出身。国際教養大学への進学を機に秋田県に移住。秋田では古民家を改築しシェアハウスを作ったり、国際学生会議の代表を務めたり、インドに瞑想修行に出かけたりとグローカルな学生生活を過ごす。現在は東京大学大学院新領域国際協力専攻に在籍し、「開発」や「資源」をキーワードに人間と自然の在り方を模索中。
飴色と香辛料
冊子(A5・78ページ)
ガイドブックPDF suyama_guidebook
●初めて暮らした都会、東京の日常/非日常に意識を向け、通学路や街を歩いた記録を約1万字のテキストと写真で構成
●黒字は街歩きのドキュメントを、注釈的に挿入した赤字は心象風景を記した。
●タイトルは、カレーのために飴色に炒めた玉ネギを「日常」、スパイスを「非日常」と捉えたところから。その境界のグラデーションを表現
ピクニックでは「日常」を「非日常的」に「日常」で楽しみます。
学校や会社に向かうとき。
「いつもの道」と退屈さを感じてないでしょうか。
できるだけ早く、効率的に。
そんなに急いで何処にいくのか。
たまにはゆっくり歩いてみましょう。
たまには一駅多く歩いてみましょう。
たまには辺りを見渡してみましょう。
きっと何かが見えてきます。
きっと何かが聞こえてきます。
もう「いつもの」道では無いはずです。
ワクワク、ドキドキ、寂しさに美しさ。
周りの景色に何を感じるでしょうか。
心の動きを観察しましょう。
それもまたピクニック。
八木あゆみ Ayumi Yagi
Webディレクター、編集者、ライター。三重県生まれ、東京都在住。紙媒体の編集者として出版社を経て、Web制作会社へ転職。Web制作ディレクション、写真撮影、Web媒体編集と経験を積み、現在フリーランス。大手企業のWebサイト制作ディレクションや、ファッション・アート・ローカルを主として、コンテンツ制作に関わる。車の運転、アウトドア、登山、旅行、お酒、猫、民藝が好き。
FOCUS IN&OUT -AKITA
冊子(A4・48枚+カード14 枚)
OHPシート、普通紙、光沢紙など、カード入り封筒を挿入
カードPDF yagi_guidebook
●秋田で撮影したイメージに、ぼかし、吹雪や結露などを活かして意図的なフィルターをかけた
●根子で収録した「根子番楽」のリズムを波形に。AIで「秋田」イメージを生成するなど、さまざまなやり方で秋田との距離、関係性を探る試み ●秋田で印象に残った言葉をカードにして冊子内の封筒に挿入
冬編初日まで、いわゆるピクニックのスタイルを外れることなく、ピクニックシートや現地で使うものをセットに封入するかたちを考えていました。
しかし、現地に降り立ち、自分の体で地域を体験すると、その構想はあっさり覆されました。興味や思考したいポイントは、自分の目で見たもの、体で感じる温度、そしてなにより秋田で暮らす人から発せられる言葉たち。それらを経て、最終のアウトプットは、焦点距離を合わせたり離れてみたりして、自分と土地の関係値を測るピクニックという、思ってもみなかったかたちになりました。
山口舞桜 Mao Yamaguchi
2000年新潟生まれ、千葉県在住。大学にて民族学考古学、博物館学を学ぶ。シリアの文化あるものたちと人々との関係、シリア外部との関係を研究する傍ら、日本での開かれたミュージアムを模索するため、さまざまな芸術祭にスタッフとして参加。公共性ある空間を探し求めており、さまざまな地域の馴染む点であったり、普遍だったりを集めようとしている。
安眠ピクニック
写真集(38×27㎝・38ページ、箱入り)
ガイドブックPDF yamaguchi_guidebook
●「外に出て何かを広げること」をピクニックと定義。野外で安眠できる場所を秋田で探し、身体を広げて土地と一体になった様子を撮影した ●写真は、他者から見えた自分、空を見る視点、横を見る視点で構成
ピクニックとは、外に出て、何かを広げることだと考えた。レジャーシートやお昼、からだ、そんなものを広げて私たちは自分の居場所を広げる行為をしているのだと思う。
自分が普段していることで考えてみると、私は出先の大地と空と空気を感じようとそこら中に寝っ転がっている。あの「安らかに横たわっている、自分がその土地と一体になっている」感覚は、安眠している状態に近い。眠ることは「どこかに意識を投げ渡すこと」。その土地に意識を投げ渡し、安らかに横になる“アレ”を「安眠ピクニック」と名付けることにした。
安眠ピクニックの良いところは、大地に近い視点と広がる視界で気持ちがいいこと、今まで知らなかった居場所を見つけられること、そして気づいていなかった場所の使い方を知れること。
人間の目の高さから撮った写真と寝ている私の目線を交えた写真集から、その視界を、感じるものを、想像してみてほしい。答え合わせは、実際に「ここだ!」と思ったところで寝て、眺めてみて。
青山天音 ティオンコ Amane Tiongco Aoyama
アーティスト。2001年生まれ。フィリピンと日本の家庭に育ち、インターナショナルスクールに通うことでグローバルな環境が身近に。2019年に国際バカロレア資格を取得。幼い頃から芸術に強い興味を持ち、現在フィレンツェの美術大学に在学中。哲学的なテーマの作品を多く制作。
What’s Cooking
カードゲーム(2.75×4.75inch、18枚)
カードゲームPDF aoyama_guidebook
●文化、国籍、言語の異なる人たちが、料理を一緒につくりながらコミュニケーションを育むためのカードゲーム
●カードのオモテ面にはピクトグラム、ウラ面にはシンプルなインストラクションを多言語で記す
「open comfort zone」というコンセプトに基づくカードゲームです。ゲームに参加するプレイヤーがそれぞれの境界を保ったままで、心地よく感じている場所から一歩踏み出すことを促します。
このカードゲームは、多文化共生が当たり前のものになっている現在、それぞれの絆を深める体験をしてほしいという願いを込めています。文化は人間のアイデンティティと親交の核心となります。カードで遊ぶことが、人々が互いの違いを理解するための機会となればと願います。
※ 青山は「夏編」終了後にイタリアの大学に復学。「冬編」には参加できなかったが、イタリアでガイドブックを完成させた。
「AKIBI複合芸術ピクニック 」では、夏編のオンラインレクチャー・シリーズを通して受講生がそれぞれに独自のピクニックを構想し、秋田で実施したガイドブックを編集・制作しました。
11名の受講生による「ピクニック・ガイドブック」を、彼らのステイトメントとともにご紹介します。
伊東陽菜 Hina Itou
北海道出身。秋田公立美術大学美術学部3年景観デザイン専攻。マクロとミクロの視点両立を目指しており、現在は建築というアプローチからその可能性を探る。
行き止まりピクニック
冊子(50ページ、紐綴じ)
袋小路マップ、食べ物、マグカップ、ラジオ、毛布、以上をギターケースに収納
●ギターケースの中に冊子とピクニックセット一式を詰めた。ケース内側の地図には、ピクニックの目的地となる袋小路の所在地をマッピング
●ケースのヘッド部に収納した冊子には、街で探し当てた約50カ所の袋小路の写真を掲載
住宅街という都市計画によって役目が決められた区域でそれ以外の行為、例えばピクニックといった行為は可能なのか。本来意図していないであろう行為をすることによって計画性を問いたい。
袋小路もまた、都市計画のほころびや周辺住民たち自身の手で偶発的に誕生するものである。なので意味的にも、ここは計画から外れた行為をするのに適している。土地的に見ても袋小路は基本的に周囲を家が囲んでいるので、ピクニックがしやすい環境である。
しかし一方で袋小路は誰もが通れる道でありながら、日常的に使うのが周辺住民のみになる傾向があるため、それ以外の者は部外者として扱われる。それをときほぐすのにこのピクニックシートを用いる。楽器ケースは持ち運びに適しているのに加え、その形状自体が目的を発している。これを持ち歩くことによって、周りの認識が目的の分からない他者から目的を持った他者へと変わる(中に楽器は入っていないので正確には住民から認識される目的とは異なるのだが、ここでは袋小路の収集という目的を持つ)。そしてギターケースを開けるとそこにはピクニックセットが入っている。これは周囲の認識を他者から仲間へと転換させる可能性を持つ。食べ物を人に振る舞ったり、一緒にギターケースの上に座ってみたりすれば自然と袋小路という空間の認証を得ることができる。そうして普段では知り得なかった者同士がつながる現象はおそらく、区分けすることでは達成できなかったものではないだろうか。
稲村行真 Yukimasa Inamura
フォトグラファー、ライター。1994年生まれ。民俗芸能の取材、発信、研究を行っている。また、地域的な境界や繋がり、多文化共生に関心がある。石川県加賀市の獅子舞を取材して発信する「KAGA SHISHIMAI project」、身体的に土地を繋ぎ記録する「東京~石川500km徒歩」などのプロジェクトを実施。2020年度の「旅する地域考alternative」を受講。
獅子舞生息可能性都市
段ボール製の獅子頭、
小冊子7冊、獅子舞の映像記録5本
ガイドブック第1章PDF inamura_guidebook
獅子舞生息可能性都市<秋田>① 神社で獅子舞を奉納する – YouTube
●「獅子舞のフィルターを通して地域を見る」という視点から、今回は秋田駅周辺でのリサーチを反映して7章におよぶ小冊子を編集
●地元の段ボールや新聞紙などで、獅子頭と胴体を自作。それらを身に纏い、独自に考案した舞を街で実践した。このゲリラ・パフォーマンスの様子も5本の映像として記録
獅子舞の視点を通して土地の性質を見抜きます。
今回の対象地は秋田駅周辺の商業地。人口減少や民俗芸能の担い手不足の問題がある一方で、秋田駅周辺ではインフラコストを削減し、住空間や商業空間はより高く大きく集中的に設計されつつあります。その中でプライベート志向が強まり、空間的な余白や地域交流の機会が失われつつあるのでは? と感じています。
実際に新聞紙や段ボールなどを使い獅子頭や胴体を制作し、毛糸で縫い合わせ、地域を身に纏うようにそれを被り町を舞い歩き、空間や人の気質の視点から獅子舞の生息可否を検証しました。「上手だね」と声をかけてもらったり、写真を撮ってくれたりと見知らぬ人々と交流でき、地域の方々は予想以上に獅子舞に対して寛容だと感じました。空間的には舞うことができない場所も多々見られましたが、総じて秋田駅周辺の商業地における獅子舞の生息可能性は高いと言えるでしょう。
7章分のガイドブック、獅子頭や胴体の実物、獅子舞が実際に街で舞う映像などの制作を行いました。秋田駅周辺の土地の性質を見抜く手がかりになるとともに、暮らしやすさの実現などに必要不可欠な新しい文化を創出する萌芽として機能してくれたらと感じています。
加賀田直子 Naoko Kagata
1997年鳥取県生まれ。東京藝術大学音楽環境創造科卒業。北海道大学大学院文化人類学研究室修士課程在学中。北方民族をはじめ北方で生きる人々、また北方の静寂に関心を抱き、現在は北海道斜里町の猟師たちのもとで狩猟する身体や環境の知覚をテーマに研究に取り組む。2021年夏には同町で「葦の芸術原野祭」の企画・運営を行う。
森でピクニックするためのガイド
冊子(A5・40ページ)
光沢紙、トレーシングペーパー、秋田で採取した枝、葉、柿の実、ドーナツ、新聞紙
ガイドブックPDF(一部) kagata_guidebook
●自身の身体と集めた草木などを素材に、ホワイトキューブで撮り下ろした写真で感覚的にピクニックを表現。最終発表でも自ら「森でピクニック」を披露してみせた
●冊子の前半は森のイメージ写真、フィクションストーリー「明日ピクニックに行こうか」を掲載
北海道の開拓は巨大な木々を切り倒して森を開墾し、道や畑を作り出すことから始まった。近代的な侵略とも受け止められるこの行為は、巨視的に見ると森からひらけた安全な場所を確保するという意味において「ピクニック」できる場所をつくりだしたといえるかもしれない。巨大な木を一本切り倒すことを想像してみると人間やその他のいきものを含む様々な身体がそこにあったのではないかと想像できる。手や足や背中や、まなざしや、音や、においから、森との関係性を生み出す。小さな身体と大きな開拓について。
知床半島にすんで50年近く経つ女性は森が不気味で怖いと言い、知床で50年以上狩猟を行う男性は熊との遭遇は交通事故みたいなもので怖くないと言う。
わたしたちが森へピクニックに出かける時、それは開拓という領土化の延長なのだろうか。
森へピクニックに出かけましょう。
坂本森海 Kai Sakamoto
陶芸家、アーティスト。1997年生まれ、長崎県出身、滋賀県在住。2019年京都造形芸術大学卒業後、同年からシェアアトリエ「山中suplex」に在籍。さまざまな地域で自ら土や石を採取して素材とし、土で作った窯を用いて器を作ることから始める。土に触れ、焼成する行為に「陶芸」として枠組みされる以前の何か根源的な意味を感じ、さまざまなアプローチから自身の関心に対して取り組んでいる。
器に見る景色
陶器 5点、冊子3冊、スーツケース、インスタントカメラ、移植ゴテ
陶器の原材料:秋田の陶…カラミ、黄銅鉱、阿仁合残土、阿仁小渕土
沖縄の陶…国頭村土、マンガンノジュール、漂着軽石、珊瑚、貝殻、沖映通り工事現場土、琉球石灰岩、ガラス片、鉄屑
ガイドブックPDF(一部) sakamoto_guidebook
●秋田市の器店で購入した沖縄のやちむんをフォーマットに、秋田と沖縄で採取した土で4枚の器を制作
●北秋田市阿仁の土で作った秋田の陶は、素材に毒素を含むため、食器としては使用できない。沖縄の陶は、那覇市沖映通りの土で制作。
●土の採取から完成に至るまでのエピソードを冊子に掲載した
日本の陶芸には、器に“景色”を見出そうとする鑑賞方法があります。
器の素地になっている土の焼け具合、釉薬と呼ばれるガラスのコーティングの流れ具合や、使用していく中で入るヒビや汚れなどの、コントロールできない偶然性、作為を超えた現象を、“自然の景色”に見立てることで美を見出していくことが、従来の“景色”の見方でしたが、器を作るための原料や技法などの過程にある出来事を知っていくと、またひとつ新たな“景色”が器の中に立ち現れてきます。
今回ピクニックを企画する上で、秋田の器屋さんで購入した沖縄の焼き物を起点に、秋田、沖縄でそれぞれ原料を採取し、購入した沖縄の小皿に使われている技法や模様をモデルにして、4枚の器を作りました。
原料を採取する旅で強く意識することになった、“移動”を取り巻く様々なエピソードと、インスタントカメラで撮影した旅の写真から、現象の美しさから見立てる景色ではない、美の発生以前の、なにか社会そのもののような景色が器の中に見出されていくようなことを、ピクニックとして体験できればと思い、企画しました。
加藤 曉 Akira Katou
2000年生まれ、兵庫県尼崎市出身。滋賀大学経済学部在学中。大学進学を機に滋賀県へ移住、湖国の自然をフィールドにポスト資本主義の社会と個人のあり方について探究と実践を行う。一環として、長浜市農村部での環境・経済・社会のサステイナビリティを主題としたフィールドワーク、東近江市での自然農法による稲作などを行う。
田んぼでピクニック
冊子(A5・12ページ)
ガイドブックPDF kato_guidebook
●現代の滋賀と60年代の秋田の稲作風景、構図の類似する2枚の写真を読み解くことを端緒に、田んぼでピクニックを提案
●自然と人間の接点の場、生産の場、コミュニティが生まれる場として田んぼを捉えて考察した
普段、私は手植え手刈り・自然農法で稲作を行うコミュニティに参加している。その活動中の昼休憩ではそれぞれがお弁当やお菓子を持参し、自らが手を入れている田んぼの横でわいわいみんなでお昼ご飯を楽しむ。この姿をピクニックの出発点とし、田んぼのそばでピクニックをする営みを1960年代の似た光景の写真と見比べながら掘り下げるガイドを作成した。
自然との接点・生産の場・コミュニティが生まれる場である田んぼ。それは人間の生の上で根源的に必要なものであるにもかかわらず、現代に自ら耕している人・その肌感覚を持っている人は少ないと思う。
1965年と現在、2つの写真を見比べながら自ら手を入れた田んぼのそばでピクニックすることの意味を考えていく。
菊地竜生 Tatsuo Kikuchi
沖縄県うるま市在住。宮城県にて仙台市市民活動サポートセンターセンター長、「Reborn-Art Festival2017」スタッフなどを務め、2017年にうるま市島嶼地域に移住。プロモーションうるまに所属し、「うるまシマダカラ芸術祭」など島の生活文化と外部人材の交わりを生み出す企画を運営。妻の故郷である秋田県五城目町との二拠点生活を検討中。
スーカーワタイ
パンフレット(A5・24ページ、蛇腹織)
ガイドブックPDF kikuchi_guidebook_omote
kikuchi_guidebook_ura
●沖縄本島と離島を結ぶ「海中道路」、その干潟をあえて歩くためのガイド。蛇腹折りの長さは約4m
●海中道路の歴史、ピクニックの楽しみ方、干潟ルートのポイント解説などを掲載した面、現場の干潟写真で構成した両面構成
沖縄県うるま市の平安座島には、潮の満ち引きによって生まれた干潟を渡るスーカーワタイ(干潟歩き)が行われていましたが、約50年前に干潟が埋め立てられ海中道路ができたことによってその風景は姿を消しました。
このピクニックではその風景を蘇らせると共に、スーカーワタイの合間に無目的に過ごす時間を織り交ぜ、「自然と開発」「観光と暮らし」など複雑なバランスが絡み合う沖縄での日常を考えます。
・このガイドブックはスーカーワタイする前に最低限必要な情報を記載しています。ガイドブックを参考にスーカーワタイが行われていた過去を追体験できます。
・スーカーワタイをした後は「海の文化資料館」に行ったり、過去にスーカーワタイを経験した方や、今も干潟で漁をしている島人の話を聞いたりするのがオススメです。スーカーワタイへの理解がより深まるだけでなく、干潟環境で育まれた島の営みを追体験することができるかもしれません。
鈴木みどり Midori Suzuki
元教員。2019年5月より秋田市民となる。自身の悪性リンパ腫の治療とコロナのために活動は制限されたが、ウェブ上での活動のチャンスと捉え、“私ができることは何か”を常に考えている。退職後は、海外で日本文化の交流や書道のワークショップなども実施している。
感じて動く日
冊子(121×166㎜・45ページ、和綴じ)
表紙に葉っぱのちぎり絵、冊子には書の挟み込み5点含む
ガイドブックPDF suzuki_guidebook
●日々の出来事を発信している自身のブログから7つの記事を選び、再構成。「金」「時」「人」というキーワードを抽出した
●書道の教員だった経歴を活かして書を活用
●拾い集めた落ち葉によるちぎり絵を表紙に
「ピクニック」というテーマに対して、私は「人」「時」「金」というキーワードを設定しました。これらは全て、限りがあり、無限ではありません。だからこそ、その中で楽しむ方法、術(すべ)を見つけるべきだと思うのです。楽しくなければ生きている意味はない。好奇心、探究心が生きる源だと考えるからです。
そして、ピクニックは私の日常です。少しでも“一歩を踏み出すキッカケ”となる人生のガイドとしていただけたら幸いです。
海外への渡航が可能になったら、私はオーストラリアに行きます。フィリピンのバギオで最初の英語学校のスタッフだった梨恵に逢いたいからです。
もし、私が「みなさんと逢いたい」と思って連絡をとった時、嫌だったら「忙しいから」と断っても大丈夫です。今回のピクニックに参加して、逢いたい人が増えました。
須山聡也 Toshiya Suyama
1998年生まれ、沖縄県出身。国際教養大学への進学を機に秋田県に移住。秋田では古民家を改築しシェアハウスを作ったり、国際学生会議の代表を務めたり、インドに瞑想修行に出かけたりとグローカルな学生生活を過ごす。現在は東京大学大学院新領域国際協力専攻に在籍し、「開発」や「資源」をキーワードに人間と自然の在り方を模索中。
飴色と香辛料
冊子(A5・78ページ)
ガイドブックPDF suyama_guidebook
●初めて暮らした都会、東京の日常/非日常に意識を向け、通学路や街を歩いた記録を約1万字のテキストと写真で構成
●黒字は街歩きのドキュメントを、注釈的に挿入した赤字は心象風景を記した。
●タイトルは、カレーのために飴色に炒めた玉ネギを「日常」、スパイスを「非日常」と捉えたところから。その境界のグラデーションを表現
ピクニックでは「日常」を「非日常的」に「日常」で楽しみます。
学校や会社に向かうとき。
「いつもの道」と退屈さを感じてないでしょうか。
できるだけ早く、効率的に。
そんなに急いで何処にいくのか。
たまにはゆっくり歩いてみましょう。
たまには一駅多く歩いてみましょう。
たまには辺りを見渡してみましょう。
きっと何かが見えてきます。
きっと何かが聞こえてきます。
もう「いつもの」道では無いはずです。
ワクワク、ドキドキ、寂しさに美しさ。
周りの景色に何を感じるでしょうか。
心の動きを観察しましょう。
それもまたピクニック。
八木あゆみ Ayumi Yagi
Webディレクター、編集者、ライター。三重県生まれ、東京都在住。紙媒体の編集者として出版社を経て、Web制作会社へ転職。Web制作ディレクション、写真撮影、Web媒体編集と経験を積み、現在フリーランス。大手企業のWebサイト制作ディレクションや、ファッション・アート・ローカルを主として、コンテンツ制作に関わる。車の運転、アウトドア、登山、旅行、お酒、猫、民藝が好き。
FOCUS IN&OUT -AKITA
冊子(A4・48枚+カード14 枚)
OHPシート、普通紙、光沢紙など、カード入り封筒を挿入
カードPDF yagi_guidebook
●秋田で撮影したイメージに、ぼかし、吹雪や結露などを活かして意図的なフィルターをかけた
●根子で収録した「根子番楽」のリズムを波形に。AIで「秋田」イメージを生成するなど、さまざまなやり方で秋田との距離、関係性を探る試み
●秋田で印象に残った言葉をカードにして冊子内の封筒に挿入
冬編初日まで、いわゆるピクニックのスタイルを外れることなく、ピクニックシートや現地で使うものをセットに封入するかたちを考えていました。
しかし、現地に降り立ち、自分の体で地域を体験すると、その構想はあっさり覆されました。興味や思考したいポイントは、自分の目で見たもの、体で感じる温度、そしてなにより秋田で暮らす人から発せられる言葉たち。それらを経て、最終のアウトプットは、焦点距離を合わせたり離れてみたりして、自分と土地の関係値を測るピクニックという、思ってもみなかったかたちになりました。
山口舞桜 Mao Yamaguchi
2000年新潟生まれ、千葉県在住。大学にて民族学考古学、博物館学を学ぶ。シリアの文化あるものたちと人々との関係、シリア外部との関係を研究する傍ら、日本での開かれたミュージアムを模索するため、さまざまな芸術祭にスタッフとして参加。公共性ある空間を探し求めており、さまざまな地域の馴染む点であったり、普遍だったりを集めようとしている。
安眠ピクニック
写真集(38×27㎝・38ページ、箱入り)
ガイドブックPDF yamaguchi_guidebook
●「外に出て何かを広げること」をピクニックと定義。野外で安眠できる場所を秋田で探し、身体を広げて土地と一体になった様子を撮影した
●写真は、他者から見えた自分、空を見る視点、横を見る視点で構成
ピクニックとは、外に出て、何かを広げることだと考えた。レジャーシートやお昼、からだ、そんなものを広げて私たちは自分の居場所を広げる行為をしているのだと思う。
自分が普段していることで考えてみると、私は出先の大地と空と空気を感じようとそこら中に寝っ転がっている。あの「安らかに横たわっている、自分がその土地と一体になっている」感覚は、安眠している状態に近い。眠ることは「どこかに意識を投げ渡すこと」。その土地に意識を投げ渡し、安らかに横になる“アレ”を「安眠ピクニック」と名付けることにした。
安眠ピクニックの良いところは、大地に近い視点と広がる視界で気持ちがいいこと、今まで知らなかった居場所を見つけられること、そして気づいていなかった場所の使い方を知れること。
人間の目の高さから撮った写真と寝ている私の目線を交えた写真集から、その視界を、感じるものを、想像してみてほしい。答え合わせは、実際に「ここだ!」と思ったところで寝て、眺めてみて。
青山天音 ティオンコ Amane Tiongco Aoyama
アーティスト。2001年生まれ。フィリピンと日本の家庭に育ち、インターナショナルスクールに通うことでグローバルな環境が身近に。2019年に国際バカロレア資格を取得。幼い頃から芸術に強い興味を持ち、現在フィレンツェの美術大学に在学中。哲学的なテーマの作品を多く制作。
What’s Cooking
カードゲーム(2.75×4.75inch、18枚)
カードゲームPDF aoyama_guidebook
●文化、国籍、言語の異なる人たちが、料理を一緒につくりながらコミュニケーションを育むためのカードゲーム
●カードのオモテ面にはピクトグラム、ウラ面にはシンプルなインストラクションを多言語で記す
「open comfort zone」というコンセプトに基づくカードゲームです。ゲームに参加するプレイヤーがそれぞれの境界を保ったままで、心地よく感じている場所から一歩踏み出すことを促します。
このカードゲームは、多文化共生が当たり前のものになっている現在、それぞれの絆を深める体験をしてほしいという願いを込めています。文化は人間のアイデンティティと親交の核心となります。カードで遊ぶことが、人々が互いの違いを理解するための機会となればと願います。
※ 青山は「夏編」終了後にイタリアの大学に復学。「冬編」には参加できなかったが、イタリアでガイドブックを完成させた。